はじめに
結婚式の披露宴において主賓祝辞や友人代表の挨拶、乾杯の挨拶などのスピーチをするときに気を付けるべきことをまとめました。ほとんどはマナーの問題ですので、過度に気にする必要はありませんが、最低限のマナーは守りましょう。
スピーチの長さ
まずはスピーチの大体の長さを決めましょう。
主賓の挨拶であれば4,5分、友人の挨拶であれば3,4分、乾杯の挨拶であれば1-3分くらいが普通ですが、特に決まりはありません。ただ、長過ぎたり短過ぎたりすると、内容がいくら素晴らしくてもあまりいい印象が残りませんので、適度な長さにしないといけません。
普通結婚式というのは分刻みでスケジュールが決まっていますので、まずは新郎新婦に聞いてみるのがいいと思います。スピーチをする人数が多いのでちょっと短めにして欲しいとか、特に出し物とか準備していないので長めにしゃべってもらっても大丈夫とか、色々な場合があります。
また、スピーチの順番も関係してきます。主賓の挨拶は普通乾杯の前にありますので、多くの出席者は「早く終われ」と思って聞いています。いくら面白い話であっても、10分も話されるといい気はしません。乾杯前の場合は長くても5分までにするといいでしょう。乾杯の挨拶も同様に、あまり長くはしゃべれません。長くても3分くらいかと思います。
ただ、逆に短すぎるスピーチもよくありません。乾杯の挨拶であれば、お祝いの言葉と乾杯の発声だけでもいいのですが、友人代表や主賓が1分も話さないのはかなり違和感があります。最低でも2,3分は話すようにしましょう。
スピーチの内容
スピーチのおおよその時間が決まったら内容を考えていきます。よほど慣れている人は別ですが、普通は原稿を書いた方がいいでしょう。人が1分間に話すのは大体300字くらいですので、5分のスピーチであれば1,500字書けばいいことになります。
スピーチの内容はもちろん各自で考えてもらえればいいのですが、よほど慣れていない限りは一般的な流れに沿って話すのが無難です。普通は以下のような流れで話をします。
- 自己紹介
- 招待のお礼と祝辞
- 新郎新婦のエピソードなど
- 激励の言葉やアドバイスなど
- 締めの言葉
特に趣向を凝らさないのであれば、この流れで話しましょう。
ただ、友人代表の挨拶であれば、手紙形式にするという手もあります。手紙形式であれば、原稿を見ながら話せるというメリットもありますので、慣れていない人はその方がいいかも知れません。
自己紹介
司会の人が新郎新婦との関係や、職業などについては紹介してくれますので、それほど詳しい紹介はいりません。「ご紹介ありがとうございます。○○です。」だけでも構いません。
招待のお礼と祝辞
「お招き頂きありがとうございます」「ご結婚おめでとうございます」という内容を、新郎新婦とご両家の皆様それぞれに述べます。「おめでとうございます」のところで一礼すると、丁寧な印象になります。
主賓挨拶の場合、新郎新婦とご両親は立っているはずですので、この話が終わったタイミングで「どうぞお座り下さい」などといって座ってもらいます。
新郎新婦とのエピソードなど
新郎新婦と仲がいい場合は、いっぱいエピソードがありますので、その中から結婚式にふさわしい話を選んで話せば問題ありません。基本的には新郎新婦を褒めておけばいいでしょう。下手にいじったりするのは大体スベるのでやめておいた方が無難です。仲間内ではウケる話でも、新郎新婦のことを全く知らない人にいきなり聞かせると普通は面白くありません。多少ありきたりになっても、いい話だけにする方がいいでしょう。
新郎新婦とそこまで親交がない場合は、正直言って何を話していいのか困ってしまうわけですが、適当に褒めておけば問題ありません。全く接点がないことはないでしょうから、ひとつくらい簡単なエピソードを入れて、あとは「優しい人」とか「頼りがいのある人」とか「とても素敵な人」とか言っておけば大丈夫です。「優しい人」と言われて怒る人はいません。
反対側の人(新郎側の来賓なら新婦、新婦側の来賓なら新郎)にも何かしら触れないといけません。結婚式で初めて見るという場合であっても何かしら褒めて下さい。可能であれば、式の前に一緒に食事する機会を作って紹介しておいてもらった方がいいでしょう。
激励の言葉やアドバイスなど
友人代表の場合は「幸せになってね」とか「これからもよろしくね」という感じで問題ありません。主賓の場合は、ここで何か含蓄のある言葉なんかを入れるとスピーチの格式が上がります。昔の中国の人の言葉とか、海外のことわざとか、そういう感じで気の利いた話が出来るのであればそれに越したことはありません。
それが出来ない場合は「結婚生活で重要なのは相手への感謝の気持ちです」とか言うことになるわけですが、非常にありきたりです。誰でも言えるようなことを長々と話しても誰も得しませんので、やめておいた方がいいでしょう。心をこめて「本当におめでとう」と言うだけでも大丈夫です。
締めの言葉
「本日ご出席の皆様のご健康をお祈り致しまして私の挨拶とさせて頂きます」「ご清聴ありがとうございました」みたいなことを言って一礼します。スピーチが終わったことを明確に示さないと、グダグダした印象になってしまいます。
忌み言葉・重ね言葉
結婚式のスピーチでは、忌み言葉や重ね言葉を使ってはいけないとされています。
忌み言葉とは「死ぬ」「別れる」「切る」「壊す」「苦しむ」などで、要するに縁起の悪い言葉です。結婚式はおめでたい席ですので、縁起の悪いことは言わないで欲しいということです。
重ね言葉とは「またまた」「ますます」「いよいよ」など、繰り返しを連想させる言葉です。「再三」「繰り返し」なども重ね言葉と言えるでしょう。結婚は一生に一度であるべきで、重ね言葉は再婚を連想させるためタブーとされています。
これらの言葉は基本的に使ってはいけません。原稿が完成した段階でしっかりとチェックしましょう。
ただ、絶対にダメかというとそうでもなく、最近はあまり気にしない人が増えてきています。わざわざ原稿の中に入れることはありませんが、スピーチの際につい口にしてしまったとしても、それほど気にする必要はありません。
暴露話、自慢話などはしない
結婚式のスピーチで一番やってはならないのは「暴露話」です。新郎新婦の過去について何か面白い話を知っていたとしても、何でもかんでも暴露してはいけません。基本的には新郎新婦の評判が少しでも悪くなる可能性がある話はしない方がいいでしょう。
結婚式には色々な人が来ていますので、自分では問題ないと思っても慎重に考えて下さい。一緒に授業をサボって遊びにいった話とか、成人前にお酒を飲んだ話などはしてはいけません。大した事ではないと受け止める人もいれば、絶対にいけないことだと考えている人もいます。法律はもちろん、ルールやマナーを破った話はしないようにしましょう。
もちろん、昔の彼氏・彼女の話もいけません。終わった話であっても、何もわざわざ結婚式の席上で言うことではありません。大半の人は笑って聞いてくれるかも知れませんが、それを不愉快に思う人がいる可能性を考えて下さい。
それからよく見かけるのが、自分の自慢話をする人です。人前で話をするとき、自慢話をちょっとだけ入れたくなる気持ちは分かりますが、人の自慢話ほどつまらないものはありません。ましてや結婚式ですので、主役の新郎新婦を差し置いて自分の自慢をすることになり、相当印象が悪いです。また、会社や大学の自慢もよくありません。自慢したい気持ちをぐっと抑えて下さい。
もちろん、下ネタや下品な話もNGです。結婚式のスピーチですので、雰囲気が壊れないよう上品に話しましょう。
新郎新婦の呼び方
スピーチの際、新郎新婦のことは基本的に下の名前で呼びます。「太郎くん、花子さん」という感じです。いつもは名字で呼んでいたとしても、名前で呼ぶようにして下さい。親戚の中には同じ名字の人が多いでしょうし、結婚したら新婦の名字は変わりますので。
ただ友人の場合は、途中から「いつも通り呼ばせてもらいます」などといった後に、普段通りに呼ぶことは問題ありません。もちろん変なニックネームはダメです。
新郎新婦と会ったことが無い場合であっても、名前で呼ぶようにして下さい。少し違和感があると思いますが、そういうものですのでそうしましょう。
一番いけないのは、名前を間違えること。招待状などを見ても読み方が分からない場合には、事前に確認しておいて下さい。
スピーチの流れ
司会者に名前を呼ばれたら、着席したまま同じテーブルの人たちへ軽く一礼しましょう。このとき、周りの人達と笑い合ったりするのは見苦しいのでやめましょう。会場の人達があなたに注目しています。
次に、起立して会場に向けて一礼します。なるべくゆっくり礼をした方が落ち着いて見えます。そして、礼が完全に終わってからマイクの方へ歩き出します。背筋を伸ばしてゆっくり堂々と歩きましょう。新郎新婦の前を通る場合は軽く目配せや会釈するくらいはOKです。
会場の人がマイクの高さを直してくれるのを待って、新郎新婦、会場へ一礼します。しっかりと腰を曲げて丁寧にお辞儀しましょう。礼が浅いとへらへらした印象になってしまいます。
そしていよいよスピーチです。大きな声で明るく話し始めましょう。
スピーチが終わったら、新郎新婦、会場へ一礼し、一呼吸してから自分の席に戻ります。椅子の左側に立つと会場の人が椅子を引いてくれるのでゆっくりと座り、テーブルの人達に軽く一礼します。
これで役目は終わりですが、スピーチ後もあなたを見ている人がいますので、しばらくはお行儀よくしていましょう。新郎新婦に合図をするくらいはOKです。
話し方・態度
一説によると、人の印象の大部分は態度や話し方で決まり、話の内容はほとんど関係ないそうです。自分が昔見たスピーチを思い返してみて下さい。話の内容はほとんど覚えてないけど、話し方や態度は印象に残っている、ということが多いと思います。
つまり、結婚式のスピーチにおいて話の内容はあまり重要ではありません。
それよりも、話し方や態度の方が重要だということです。
ではどうすればいいかというと、堂々とした態度で、明るく大きな声で話すこと、です。
まずは堂々とすることが大事と思います。緊張していると特に、余計な動作が多くなってしまうものですが、顔や頭を触ったり、きょろきょろしたりしていると、落ち着き無く見えてしまいます。緊張があるので難しいですが、なるべくじっとして話しましょう。また、速い動きは落ち着き無く見えますので、普段よりもゆっくり動くイメージでいると堂々と見えます。
次に大事なのが、声の大きさや話す速さです。もちろん人それぞれなのですが、いつもよりも大きく、明るく、はっきりした声でゆっくりと話すことを心がけて下さい。緊張していると、声が小さくなったり、話すのが速くなったりしがちですので、そこに注意しましょう。
練習はしっかりと
結婚式のスピーチというのは、何回やっても緊張するものです。自分では慣れているつもりでも、いざその場に立ったら緊張で話の内容が飛んでしまうかも知れません。原稿を完全に覚えていたとしても、念のために原稿をポケットに入れておく方がいいでしょう。実際には使わなくても安心感が違います。
もちろん、事前の練習を怠ってはいけません。人によって違いますが、10回や20回は練習した方がいいでしょう。練習の際は、実際に声を出すことが大事です。なるべく本番と同じような状況を作ってお辞儀の深さなどを含めて練習しておきましょう。出来れば誰かに見てもらったり、動画を撮って自分でチェックしたりもしてみましょう。
おわりに
このページに書いたように、スピーチにおいて気をつけることは色々ありますが、結局大事なのは新郎新婦に対する気持ちです。お祝いしようという気持ちがあれば何とかなります。また、結婚式に出席している人たちも気持ちは一緒です。みんなで一緒にお祝いしようという席ですので、それを忘れずに思い出に残るいい結婚式になるようなスピーチをしたいものです。