少子化問題の原因と対策

はじめに

日本を含む多くの先進国で少子化が進んでいます。合計特殊出生率で見ると、1947年には4.54あったのが、2017年には1.43となっています。人口を維持するためには2.07程度必要とされていますので、これは危機的な状況です。すでに日本の人口は減りはじめていますが、このままでいくと数十年後にはとんでもない少子高齢化時代が来ると予想されます。

すでに人口が減少していますし、かなり手遅れな感はあるのですが、少しでもいい未来のために早急な対策が必要です。

ということで、少子化の原因とその対策についてまとめてみました。もちろん、少子化の原因は単純ではなく、多くの要因が複雑に影響しあっていますので、そのすべてを網羅することは出来ません。現時点で私が重要と思うものを取り上げています。

私が思うに、少子化の主な原因は「経済の発展」「女性の社会進出」「価値観の変化」の3つです。以下それぞれについて考えていきます。

経済の発展

少子化の原因としてもっとも大きいと思うのは経済の発展です。日本は終戦後の高度成長期に大きく発展したわけですが、それと同時に出生率が大きく下がりました。また、世界各国を見ても、開発途上国の出生率が高く、先進国のほとんどで出生率が低いという傾向が見られます。

なぜそうなるかというと、ひとつは生活水準の問題です。今の日本ではそれなりにセーフティネットが整備され、ほとんどの人が一定程度以上の生活を保障されています。これは世界的に見ると、非常に恵まれた環境と言えるでしょう。中流以上の世帯においては趣味や娯楽にかなりの時間とお金を使うことが許されています。

人間というのはこういう状況に置かれると、より楽しいことややりがいのあることを探し求めます。それにともない、娯楽の種類も量も格段に増えました。結婚して子供を産むこと以上に楽しいこと、やりがいのあることがあれば、そういった生き方を選ぶ人間も当然多くなります。

一方、昔の日本や今の途上国では、多くの人が生きることに必死です。結婚して子供を産み、普通の家庭を築くことが出来ればそれが一番幸せなことでしょう。結婚せず、子供も作らずに趣味に生きるとか、そういう選択肢がある人は多くないと思われます。

また、子供も重要な労働力として考えられていることが多いです。アフリカなどの途上国では、小さい子供であっても大人と同じように働かなければ生活していけない現状があります。日本では、高校生になったら自分の小遣い稼ぎのためにバイトをはじめるのが普通の感覚で、小学生、中学生の頃から働かされる人はかなりの少数派になっています。

それから、経済の発展にともなって医療水準が向上したことも少子化の一因です。昔は出産前後や乳幼児時の死亡率が高かったため、確実に子孫を残そうと思った場合、何人もの子供をもうける必要がありました。ですが、現在の日本の医療は世界でも有数の水準になっていますので、子供は一人だけ、という考え方の人も増えていると思われます。

このように、日本全体で見ると経済が発展し豊かな生活を送れる人が増えたわけですが、一方で貧困も問題になっています。一部のお金持ちに富が集中することで、貧富の格差が大きくなっているのです。それにともない、相対的貧困率は上昇傾向にあります。

日本には生活保護の制度がありますので、ほとんどの国民は最低限の生活を保障されているのですが、家庭を持って子供を育てるための十分な経済的余裕がない世帯はもちろん存在します。働き方改革によって非正規雇用者も増加しており、経済的な理由で子供を作らない人も多いでしょう。実際、少子化に関する多くの調査・アンケートでは、経済的な問題が一番の理由とされることが多いです。

女性の社会進出

少子化の要因の2つ目は女性の社会進出です。

1985年の男女雇用機会均等法、1999年の男女共同参画社会基本法をもとに、毎年数兆円もの予算を組んで女性の社会進出が進められています。何兆円も使っている割には成果が上がっていませんが、それでも女性の就業率は上がっています。20年くらい前には専業主婦世帯と共働き世帯の数が逆転し、今では共働き世帯の方が普通という状況です。

ただこれは、働きたい女性が働けるようになったというよりは、経済的に苦しいために共働きをするしかないというネガティブな要因の方が大きく作用している気がします。政府の拙速な政策によって、歪んだ形で働く女性が増えたということです。

結果、出生率はこの期間に大きく下がっています。女性が働くことによって、未婚化、晩婚化が進んだからだと考えるのが自然でしょう。

社会で働いている女性にとって、出産・育児と仕事のどちらを優先すべきかは重大な問題です。産休・育休が自由に取れればまだいいですが、そのような環境にはなっていません。よって、仕事を優先した女性の分だけ出生率が下がるということになるわけです。

バリバリに働いている女性にとって、結婚する必要性が低下したということも言えるかと思います。生活するのに十分な給料をもらっていれば、無理して相手を探して結婚する必要はありませんし、ましてや子供を産むこともありません。

女性の社会進出が悪いことだとは言いませんが、日本の場合、拙速に女性の就業率を上げようと無理をしたため、出生率に悪影響を与えてしまったということです。待機児童の問題や産休・育休の在り方など、対策をはじめてはいますが、順番が逆だったのではと思います

価値観の変化

少子化の要因の3つ目は結婚・出産に関する価値観の変化です。

ここ2,30年で、結婚・出産に関する価値観は大きく変わりました。以前の日本では、結婚して子供を作るのは当たり前のことで、ほとんどの人は実際にそうしていました。30歳を超えても未婚の人がいると、近所の人たちから何か問題があるんじゃないかと心配されたことでしょう。

適齢期になっても結婚しないのは世間体が悪いという認識があり、そのような状況を防ぐための見合いのシステムが機能していました。未婚の人がいると、近所の人や親戚の人がお見合い相手を色々なところで探してくれたわけです。

そもそも昔は、結婚相手を決めるのは親の仕事だったのですが、戦後から恋愛結婚が増えてきて、それにともなって見合い件数は激減します。今では、見合い結婚だと言うと逆に何か問題でもあるみたいな感覚が主流かと思います。

もちろん今でも、婚活サイトなどの形で見合い的なものはあるのですが、昔のように半強制的に結婚させられることはほとんど無くなりました。結婚したくない人はしない自由が出来ましたし、結婚したくても出来ないという人も増えました。当然の結果として出生率が下がることになります。

また、家族に関する価値観の変化も少子化を助長しています。

昔は親との同居が当たり前でしたが、最近ではかなりの少数派になっています。都会に出てしまうケースも多いですし、地元にいても別居から考えるのが当たり前です。この理由も色々でしょうが、経済的な要因が大きいように思います。昔の人はある程度仕方なく家族と同居していたのであって、別居出来る経済的な余裕があれば別居するということです。

別居するとなると、跡継ぎの感覚も大きく変わります。昔は長男が家を継ぐのが当たり前で、家系を絶やさないために子供を作ることが義務となっていました。しかし今では一軒家に住んでいる人が減っていますし、後継ぎという考え方自体が無くなりつつあります。

また、介護の考え方も変わりました。昔は自分の親を介護するのは当たり前でしたし、自分が将来介護してもらうために子供が必要という考え方もあったと思います。しかし今であれば老人ホーム等に入るという選択肢もありますので、その意味でも子供の必要性が薄くなったと言えます。

少子化の対策

さて、ここまで少子化の主な要因をまとめましたが、問題はこれらを踏まえてどのような対策をするかということです。もちろん政府も問題は認識していますので、様々な対策を行っているわけですが、ほとんどの政策が的外れで税金の無駄遣いが多いように感じます。

とはいっても、世界の先進国が悩んでいる問題ですので、特効薬的な解決策はありません。もちろん、少子化を完全に克服することは不可能と思いますが、少しでもいい未来のためには何か対策を講じる必要があります。

私見では、少子化対策の方針としては「人口減を受け入れる」「出生率を上げる」「移民を受け入れる」の3つが有力と思います。以下、順にまとめます。

人口減を受け入れる

1つ目の対応策は人口減を受け入れる、というものです。

現状でも日本の人口は毎日減っていますので、ある程度は受け入れるしか無いわけですが、問題はどこまでの人口減を受け入れるかです。そして、人口が減ったときに耐えられるようなシステムを用意しておかなければなりません。

では具体的にどうすればいいか、というのは難しいのですが、最近大流行している人工知能を活用するのがひとつの考え方です。人工知能と言ってしまうと安っぽいですし語弊もありますので、デジタル化とかITの活用と言う方がいいかも知れません。

例えばですが、自動車や電車の自動運転が実用化されれば、現在運転手として働いている分の人口は減っても大丈夫ですし、ITを使って農業を効率化出来れば、今より少ない人数で今と同じだけの収穫を得られます。

現状からどのくらいの人口減が可能かは分かりませんが、2割か3割くらいは大丈夫そうです。日本は国土が狭いですから、人口密度で考えれば2分の1とか3分の1とかが適正なのかも知れません。

ただもちろん、高齢化の問題があります。人口減を受け入れるにしても過渡期を耐え抜かないといけませんので、その対策は別途必要です。そして、人口を安定させるためにはまた別の対策も必要となります。

出生率を上げる

2つ目の対策は出生率を上げることです。

もちろんこれが出来れば誰も苦労しないわけですから、簡単ではありません。ただ、現状の政府が行っている対策はそれほど効果が期待出来ません。もう少し効果がありそうな対策を考えるべきと思います。

これも具体的には難しいわけですが、私としては出産に対するインセンティブを与えるしかないと思います。少子化についてアンケートをとると、経済的に・・・とか、待機児童問題が・・・とか、色々と原因はあがりますが、結局のところ子供を産みたくないから産まないのです。

だったらこれを解決するためには、子供を産みたくなるようなインセンティブを与えるしかありません。政府が簡単に使える手段としては補助金です。

フランスのように、子供手当て、家族手当て、その他もろもろの補助金を充実させるのが単純ですが結局は一番効果的でしょう。もちろん、不公平感が少なく、またインチキが出来ないような上手い設計が必要ですが、高い効果が期待できます。

まあ、日本の政治家・官僚の場合は利権化してしまって上手いこといかないでしょうけど。。。

補助金を出すとなると財源はどうするという話になりますので、だったら税金でも構いません。独身税を取れば結婚する人は確実に増えるでしょう。子無し税を取れば出生率は必ず上がるでしょう。ただもちろん、結婚出来ない人に対するケアとか、色々と難しい問題はあります。

独身税などと言うと、独身でいる自由を奪うのは差別だ、憲法違反だ、みたいな反論があるでしょうが、そんなことはありません。そんなことを言ったら、たばこ税とか酒税とか自動車税とか全部違憲になってしまいます。税金とはそういうものです。

補助金、税金以外で出生率を上げる政策としては、一夫多妻制というのも提案されていますが、これはいくつかの研究・調査によるとあまり上手くいかないようです。収入に比例して子供の数が増えるといいのですが、どれだけ金持ちでも時間が限られているのでそうはいきません。

また、ベーシックインカムも可能性はあると思いますが、社会への影響がとても大きいので、上手い設計を考えるのは現実的ではないでしょう。日本で油田とかレアメタルとかが見つかれば話は別ですが、当面はあまり期待出来ません。ただ、資本主義制度自体が行き詰まっている感もありますので、意外と近い将来にベーシックインカム級の構造変化が起こる可能性は否定出来ません。

移民を受け入れる

もうひとつの可能性は、自民党が進めている移民を受け入れるという選択肢です。

移民を増やせばそれだけ日本の人口は増えますし、きっと将来的には出生率も上がるでしょう。分かりやすくて即効性のある政策ではありますが、最後の手段的な印象があります。

移民を受け入れた場合のデメリットは、当たり前ですが外国人が増えることです。日本は島国で、昔から大体ひとつの民族でやって来ましたので、他の民族の人と共生することに慣れていません。ある程度の移民受け入れは必要なのでしょうが、必要最小限にして欲しいと思っている人は多いでしょう。

具体的に心配されるのは治安の悪化です。日本の治安は世界トップレベルですので、どの国からやって来た人でも治安の悪化要因になり得ます。現状でも急に増えた観光客とのトラブルが多発していますので、本格的に移民を受け入れた場合にはかなり混乱することでしょう。

また、将来的には移民の子孫がどんどん増えていきますので、その分元からいる日本民族が少なくなります。仕方のないことかも知れませんが、出来ればそのような事態は避けたいと思う人が多いでしょう。

さいごに

以上、現在の日本における少子化の原因とその対策について私なりにまとめました。

少子化の原因は、主に「経済の発展」「女性の社会進出」「価値観の変化」の3つであり、その対策としては「人口減を受け入れる」「出生率を上げる」「移民を受け入れる」の3つなどが考えられるという話です。

もちろん難しい問題ですので、他にも要因はありますし、もっといい対策もあると思います。いずれにしても、現状を変えなければ近い将来困ったことになります。政府も対策をするとは言っていますし、実際にお金も使っていますが、これまでのところ真に有効な対策は行われていません。政治家や官僚の人たちは、利権作りや勢力争いなどではなく、もっと真剣に日本の将来を考えてもらえればと思います。