片たり

「たり」は本来「~たり~たり」と二回以上繰り返して使うべきです。しかし最近、後ろの「たり」を付けない人が増えている気がします。国語辞典から「たり」の意味を引用しますので確認して下さい。

たり

[接助]用言、一部の助動詞の連用形に付く。ガ・ナ・バ・マ行の五段活用動詞に付く場合は「だり」となる。


(ア)動作や状態を並列して述べる。「泣いたり笑ったりする」「とんだり跳ねたりする」
(イ)反対の意味の語を二つ並べて、その動作・状態が交互に行われることを表す。「暑かったり寒かったりの異常な陽気」「足を上げたり下げたりする運動」

2 (副助詞的に用いられ)同種の事柄の中からある動作・状態を例示して、他の場合を類推させる意を表す。「車にひかれたりしたらたいへんだ」

3 (終助詞的に用いられ)軽い命令の意を表す。「早く行ったり、行ったり」

デジタル大辞泉

ここで言いたいのは1の用法についてなのですが、「泣いたり笑ったりする」「とんだり跳ねたりする」のように、複数回繰り返すのが本来の使い方です。

しかし最近は、「泣いたり笑う」「とんだり跳ねる」のように、後ろの「たり」を省略する人が増えているようです。この例ではかなり違和感がありますが、「たり」と「たり」の間の文章が長い場合にはそれほど違和感がありません。「美沙子は不意に泣いたり、まるで小さな可愛らしい妖精を見つけたかのように優しそうに目を細めてくすくすと笑う」みたいな文章であれば、「たり」の誤用はそれほど気になりません。

ただ、間違いは間違いですし、出来れば正しく使って欲しいと思うのですが、残念ながら時代の流れみたいです。SNSやネットの掲示板だけでなく、雑誌やテレビなどのいわゆる文章のプロの中にも「たり」を間違って使う人が増えてきました。

私としては非常に気になるのですが、言語は生き物と言われます。時代とともに変わってしまうのは仕方のないこと。「たり」に関してはもう諦めるしかない状況のようです。前述のデジタル大辞泉にも、「近世後期からはあとのほうを省略して「…たり…」の形をとる場合もみられる。」との補説が付いています。

これはもう、こちらが慣れるしかないみたいです。何か釈然としませんが。